乳がんの抗がん剤治療 その3
乳がんの抗がん剤治療に使われる薬剤とその副作用についてお話している続きです。
「メトトレキセート」という薬があります。
これは注射薬で、がん細胞が作られる過程を阻害する働きがあります。
副作用としては肝障害や腎障害、そして口内炎を引き起こすケースがあります。
「5-FU]は注射薬です。がん細胞が作られる経過で阻害をします。
副作用では、吐き気、下痢、嘔吐、肝障害、白血球の減少、皮膚の色素沈着などが見られます。
「ファルモルビシン」という薬は「アドリアシン」と同じ注射薬です。
がん細胞の増殖を抑える効果があり、副作用も「アドリアシン」とだいたい同じですが、どちらかと言うとアドリアシンよりも軽度の副作用になります。
「タキソテール」または「タキソール」と呼ばれる薬は注射薬で、がん細胞が細胞分裂することを抑える薬です。
副作用としては白血球の減少、または脱毛、そして末梢神経障害があげられます。
「アドリアシン」という薬は注射薬であり、がん細胞が増えて成長することを抑える効果があります。
副作用としては、白血球が減少してしまうことや、脱毛、また吐き気、嘔吐など、そして心筋梗塞の原因となる場合もあります。
「トラスツズマブ」は遺伝子組み替えを活用した新しい薬剤です。
HER2タンパクの受容体に付着します。
がんの再発や転移に有効だと言われていますが、心臓への毒性があることで知られています。
このように同じ乳がんの抗がん剤治療に使われる薬でも、その作用と副作用に若干の違いがあることがわかりますね。
乳がんの抗がん剤治療 その2
乳がんの抗がん剤治療を続ける上で問題が浮上します。
乳がんに対して抗がん剤治療を続けていると、がん細胞が抵抗性を身につけてしまうのです。
ある特定の抗がん剤を使い続けた場合、がん細胞にこの抵抗性が出来ることにより、がんの症状は改善されません。
このケースは、結果、副作用だけが残るという事態になります。
ですから、がん細胞にまだ抵抗性が身に付いていない、初期の治療ほど、効果的治療であるということになりますね。
乳がんの抗がん剤治療には、単独使用ではなく、手術、またはホルモン療法、放射線治療と抗がん剤を組み合わせるケースがあります。
こうして複数の治療法を合わせる治療方法を集学的治療と言います。
例えば、手術後に抗がん剤治療をすることによって、外科手術では切除しきれなかったがん細胞を殺し、その再発を抑える目的で使われるのです。
抗がん剤や手術をそれぞれ単独で使う治療よりも、複数の治療法を合わせたほうが効果が期待できると言われています。
現在、日本で乳がん治療に使われている抗がん剤にはいくつかありますが、その薬剤の働きと副作用はどのようなものなのでしょうか?
まず乳がんの抗がん剤治療に使われる薬剤で「エンドキサン」というものがあります。
エンドキサンには注射薬、内服薬があります。
エンドキサンというものは、がん細胞のDNAを破壊する働きがあります。
白血球が減少する症状が副作用として出るほか、出血性膀胱炎、または脱毛、そして嘔吐などの症状が出る場合があります。
乳がんの抗がん剤治療 その1
乳がんの患者に抗がん剤治療を行う場合には、どんな点に気をつけなければならないでしょうか?
それは、抗がん剤の効果と副作用の双方をきちんと検討する必要があると言えます。
乳がんに対して抗がん剤治療という化学療法は、とても有効な治療法ですから、効果と副作用をきちんと理解し、治療に入りたいものです。
抗がん剤は、乳がんのがん細胞が増えることを抑えます。
また、がん細胞を死滅させ、乳がんの治療を行います。
この時、抗がん剤は正常な細胞にも、同じくダメージを与えてしまうため、それが副作用という形で症状が出ます。
ですが、現在では、この副作用を減らす薬剤が開発されていますので、昔よりも、抗がん剤治療の環境が整ったと言えるでしょう。
その点でも、抗がん剤治療はかつてのものより、安心かもしれません。
抗がん剤には日本で許可されている薬で数十種類あります。
その中から単独で選び出し投与するわけではありません。
複数を組み合わせての多剤療法が一般的です。
多剤療法というのは、複数の薬剤を使うことによって副作用を減らすことが出来き、症状が改善される効果があります。
お話したように、抗がん剤はがん細胞と正常細胞を攻撃してしまい、ダメージを与えます。
ですが、その後は正常な細胞の方が、がん細胞より早く回復するのです。
ですから、乳がんだけなく他の抗がん剤治療もそうですが、抗がん剤の投与に間を空けることがポイントになります。
投与間隔を空け、正常細胞の回復を待ちつつ、まだがん細胞にはダメージを受けた状態で、次の抗がん剤を投与し、がん細胞を攻撃するという治療法です。
抗がん剤TS-1のメカニズム
先ほどもお話したように、1999年から使われている大鵬薬品工業株式会社の抗がん剤、「TS-1」は経口抗がん剤(服用できる薬)として、抗がん剤治療では一般的な薬剤です。
この薬はがん細胞を攻撃し、また副作用を少なくするよう考えて開発された薬です。
ちょっと難しいとは思いますが、この抗がん剤TS-1のメカニズムを簡単にお話しましょう。
まず、TS-1の中の成分、テガフールが肝臓において5-FUに変化します。
そしてそれを血中に放出させます。
また他の成分、ギメラシルが、その放出した5-FUが分解することを妨げ、血中濃度を上昇させることで、がん細胞を攻撃する力を発揮させます。
TS-1のもう1つの成分、オテラシルカリウムが、がん細胞を攻撃する5-FUが同時に起こしてしまう副作用としての嘔吐や悪心、下痢、または食欲不振などの、主に消化器の症状を軽くします。
こうしてがん細胞を攻撃する力を持ちながら、その副作用を軽くすることで、患者が長い期間、この薬を飲み続けられるように開発したものです。
今でも、患者さんの体の負担を少しでも軽減するため、新しい薬の研究、開発は日々、進化しているのでしょうね。
抗がん剤TS-1は、どのタイプのがんの抗がん剤治療に使われているでしょうか?
それは、頭頸部がんを始め、非小細胞肺がん、また、胃がん、結腸がん、直腸がんの抗がん剤治療に使われています。
それに手術不能の乳がんや、再発した乳がん、膵がん、胆道がんの抗がん剤治療にも使われており、今後も更に適応するがんが増えると期待されています。
抗がん剤TS1とは? その2
先ほど、抗がん剤TS1が幅広く抗がん剤治療に使われている薬剤だとお話しました。
臨床試験の結果でもTS1の効果が期待できる数字が出ています。
では、TS1の副作用にはどんな症状があるのでしょうか?
それは他の抗がん剤と同じように悪心や、嘔吐、吐き気、食欲不振などがあります。
また消化器症状、口内炎、そして下痢などの症状も副作用としてあげられます。
TS1の成分である5-FUが、がん細胞を攻撃する際、同様に骨髄にダメージを与えてしまうこともあります。
その結果、白血球、赤血球、そして血小板が減少してしまいます。
これらが減少することによって、貧血症状が起きたり、出血したり、または感染症の恐れが出てきてしまうのです。
TS1だけではなく、どうしても抗がん剤治療には副作用が付きまとってしまいますが、もし耐えられないほど苦しいのであれば、遠慮せずに担当医にその旨を伝えたほうが良いでしょう。
薬剤の量や組み合わせなどで副作用は変わってきます。
症状によって投与する抗がん剤の種類や量を変えてもらいましょう。
ところでTS1は一体どれくらい前から抗がん剤治療に使われているのでしょうか?
1999年から大鵬薬品工業株式会社が抗がん剤「TS-1」という薬剤を販売しています。
これは経口抗がん剤として幅広く使われています。
このTS-1の主要成分は何かと言うと、オテラシルカリウム、テガフール、そしてギメラシルの3剤です。
5-FUががん細胞を攻撃する効果を活かしつつ、同時に副作用を軽くすることを目的として開発された抗がん剤と言えるでしょう。
抗がん剤が「効く」とは治ること?
抗がん剤治療を行う場合に使われる言葉で少し気になることがあります。
それは、この抗がん剤は「効果がある」または、この抗がん剤は「効く」と言いますが、これは具体的には完治するということなのでしょうか?
例えば、薬局の店頭で薬を購入するときに「頭痛に効く薬を下さい」と言って、お店の人にお勧めの薬を出してもらいます。
この場合の「頭痛に効く」とは頭痛が治るという意味で使っています。
このように「薬が効く」という言葉は、世間一般では病気が治る意味で使われています。
ですが、抗がん剤治療においては、これはちょっと違ってくるのです。
あるケースとして、肺がんの患者に抗がん剤のイレッサを投与したとしましょう。
肺がんの場合、CT画像診断などで、がん細胞が以前撮影時より半分に以上、小さくなっていた場合は抗がん剤の効果があった、薬が効いたと判断するのです。
がん細胞の縮小が見られた期間が、単なる一時的なものであったとしても、薬が効いたことになります。
もちろん、その後に、またがんが進行して、拡大してしまい、半分になったものが、また元の大きさまで戻ってしまっても、一度小さくなったのですから、これは抗がん剤の効果があったということになります。
結果、抗がん剤治療での「効果がある」という言葉、完治するという意味ではなくなりますね。
ですから、抗がん剤が効くということは、「延命が出来た」または「がんが小さくなった」という意味で使われていることになります。
もちろん、抗がん剤治療でがんが完治するケースも多数ありますので、誤解なさらないようにして下さい。
抗がん剤治療はどんな時に必要?
抗がん剤治療はどういった場合に行われているのでしょうか?
がんが早期に発見され、がん細胞がわずかな狭い範囲内に留まっているケースはどうでしょうか?
こうしたケースは、外科手術により切除したり、または放射線を使っての治療も有効だと言われていますから、抗がん剤は使いません。
ですが、がん細胞が増加すると伴に、リンパや血液と一緒に、がん細胞は全身に渡ってしまいます。
このようなケースでは、限られた部分の局所的な治療では追いつきませんので、全身に効果をもたらす治療法が必要であり、それが抗がん剤治療なのです。
抗がん剤には元々、がん細胞を死滅させたり、がん細胞の増殖を抑える効果があります。
ですから、がん細胞の進行を抑えることができるのです。
それに、がん細胞が、活発に細胞分裂を続けて増えている時が、一番抗がん剤が効くと言われています。
注射や点滴、服用することで体の隅々まで薬剤が行き届きます。
抗がん剤が効きやすいがんと、効きにくいがんもあります。
急性白血病や、悪性リンパ腫、または小児がんなど、これらのがんは、抗がん剤だけで完治するケースもありますから、抗がん剤の威力が証明されていますね。
乳がん、胃がん、それに前立腺がんは、抗がん剤治療はかなり効果を上げているというデータもある一方、膀胱がん、すい臓がんなどは、効果があまり出ないようです。
これには見つけにくいがんであることが、関係しているのでしょうか。
外科手術に補助的な治療法として、抗がん剤治療が併用される場合もあります。